フリーウェイを走る前に一面にトウモロコシ畑が広がるのが見えた。
ミズーリ州セントルイスから東に車を走らせ、目的地であるカンザスシティまでの旅。
カンザスシティといってもカンザス州側ではなく、ミズーリ州側の方のカンザスシティで(州境なので)の方である。
時間に余裕があったので、ボクはガスステーションの近くにあるハンバーガーショップに立ち寄った。
無類のハンバーガー好きなのだ。
扉を開けると女が立っていた。
「扉を開けるまで何がそこにあるか分からない。何がそこにあるか分かっていたとしても、それは予想内の展望にしか過ぎないのよ。扉が挑戦で、扉の向こうの分からないものが可能性よ。」
とボクに語りかけ、頷いた。
「ここは少し変わったお店だ。」
とボクは女に話した。
「君はUWFインターナショナルのスローガンと同じことを言ってるな。"我々こそ最強の集団である。あとは、まやかし" ってね。」
「そんなインチキくさい事は言わないわ。」
黙って、メニュー表を見た。
色々な種類のハンバーガーがあってどれにするか迷った。
ボクは1番上に書いてあるハンバーガーを注文した。
迷った時はいつも1番上に書かれたものを注文するのだ。
ハンバーガーは大きいものに限る。
日本のハンバーガーはどこも小さく、ホモ野郎が作ったものとしか思えなかったが、アメリカのバーガーはやはりでかい。
大は小を兼ねる。
この言葉の真髄を感じる。
ハンバーガーを頬張りながら、バナナジュースを飲んでいた。
「あなたは私を見たので信じたのか。見ないで信じる者は幸せである。」
女はボクに語りかけたが、何を話したらいいのか分からなく沈黙が続いた。
「ヨハネによる福音書からキリストの言葉の引用よ。」
と沈黙を突き破り彼女が話した。
「それじゃあ、ボクらの会話は全てシェイクスピアの戯曲からの引用にした方が良いんじゃないか??」
「それじゃあ、あまりにも悲劇的な物語になるね。」
「シェイクスピアの物語は悲劇じゃない。ポジティブな事やネガティヴな事を全ての枠をはずして物事を大きく捉えているだけだよ。ポジティブな側面やポジティブシンキングだけを大切に扱われている昨今にカウンターパンチを入れなければならない。ポジティブやネガティヴを区別なしで大きく捉えることが本当の知性だと言っている。」
沈黙を聞いた。
壊れかけのラジオからはブルース・スプリングスティーンの"Born in the USA."が流れていた。
バナナジュースを飲み干した。
「渡辺さんの書いてること、だいたい嘘ですよ!」
とATSUKOさんに注意をされる(イエローカードは2万枚ぐらいたまった)
ボクがこの時した会話のことをネタにブログを書くと言ったときに、痛烈にATSUKOさんに批判された。
基本的スタンスで、ずーっと自身のブログの事を
"リアルとファンタジーの狭間"
と表現しているのだが、登場人物たちにとっては関係がないらしい。
人生規模で迷惑をこうむっている人がいるらしくて全てが嫌になることがあるらしい。
そういう話を聞くと、良いことしたなぁーと本当に貢献できた事を誇りに思っている。
それに気付き怒りに来る人。
世の中は因果によって成り立つのだ。
ニューヨーク編